Google Pixel 9a レビュー/8万円に値上げも「安い」と感じる高コスパ
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア『携帯総合研究所』の創設者・運営者です。記事の執筆をはじめ、各キャリアやメーカーへの取材、素材の撮影も行なっています。システムエンジニアとしての経験を活かし、HTML・CSS・JavaScript・PHP・Pythonを用いたサイトデザインやテーマの構築を行っています。また、4キャリアの料金比較ができるシミュレーターの開発も担当しています。

優れたコストパフォーマンスで高い人気を誇るGoogle Pixel Aシリーズ。
日本では、特に手頃な価格で人気を集め、Pixel 7シリーズが発売された2023年には前年比5倍という驚異的な成長を記録。その存在感を一気に高めました。
そんなAシリーズの最新モデルとして登場した「Google Pixel 9a」。ここ数年は円安や物価高の影響を受けて値上がりが続いており、今作はついに79,900円に。
手ごろとは言いづらい価格になりましたが、シリーズ最大となる5,100mAhの大容量バッテリーや、信頼性の高いデュアルカメラ、そしてGoogle独自の高度なAI機能を備え、価格以上の価値で選ばれるスマートフォンへと進化しています。
Google Japan
デザイン:象徴的なカメラバー廃止、実用性は向上
カメラバーは、一目で見てGoogle Pixelとわかる象徴的な存在です。昨年夏に登場したPixel 9シリーズでは、Googleの検索窓をモチーフにした新しいカメラバーが話題になりました。
磨きをかけた新しいカメラバーは好評で、誰もがPixel 9aにも同じデザインが採用されると予想していたはずです。
しかし、Pixel 9aはカメラバーを最新化するどころかカメラバーを完全に廃止。背面は出っ張りのない、ほぼフラットな形状へと大胆に方針転換しました。

今やカメラの出っ張りはスマートフォンの常識となっているため、実際にPixel 9aを箱から取り出したときは、思わず懐かしいと感じました。
出っ張りがなくなったことで、ポケットへの出し入れや机に置いたままの操作も快適。
このレビューの下書きもPixel 9aをレザーのデスクマットにおいたまま、文字入力していますが、手に負担がかからない分、手に持って操作するよりも快適です。
背面はサラサラとしてポリカーボネートで、すりガラスのような手触り。爪で軽くコンコンと叩くとプラスチック特有の音がするので不思議な感じです。ガラスと同じで指紋は目立たないものの、光の当たる角度によって手の油が浮かぶのはポリカーボネート特有です。
もし、ケースを使用しないのであれば、PeonyやIris、Porcelainといったポップで明るい色を選ぶことをおすすめします。
ポリカーボネートがガラスよりも優れているのは割れにくいことです。スマホをよく落とす人にとってはプラスチックの方が良いかもしれません。
前面のディスプレイは、Pixel 9がGorilla Glass Victus 2を採用するのに対して、Pixel 9aはGorilla Glass 3です。10年以上前に登場した強化ガラスですが、今もミッドレンジモデルには多く採用されています。
- Gorilla Glass 3:キズに対する耐性が3倍に向上、目にみえるキズも40%削減。キズがついたあとの強度も50%向上
- Gorilla Glass 4:粗い面に落下させたときの破損率が約半分に。1メートルの高さから粗い面に落とすテストでは8割が無事
- Gorilla Glass 5:落下の強度が1.8倍に。キズへの耐性は変わらず。
- Gorilla Glass 6:1メートルの高さから粗い面に落下させたときの破損率が改善。最大2倍の性能向上
- Gorilla Glass Victus:固く粗い表面への耐落下性が最大2mまで向上。キズへの耐性が最大2倍に向上
- Gorilla Glass Victus 2:コンクリートのような粗い表面への落下耐性が向上。擬似コンクリートに最大1メートルから落下させても破損を免れる。
防水・防塵性能は、上位モデルと同じIP68等級にアップグレードされています。水回りやアウトドアでも安心して使えるようになりました。
- IP67:一時的に、一定の水圧または水深で水没しても内部に浸水しない。
- IP68:継続的に水没しても内部に浸水しない。水面下で使用可能。
電池持ち:シリーズ最大容量、1日は余裕で使えるスタミナ
Googleがカメラバーを廃止した理由のひとつが、バッテリーの大容量化にあります。
AppleがiPhone 16eでそうしたように、Googleも内部設計の改善によって内部スペースを生み出し、バッテリーの大容量化につなげました。
その結果、Pixel 9aは6.3インチというコンパクトサイズながら、なんと6.8インチのPixel 9 Pro XLを上回るバッテリー容量を実現しています。
結果から言えば、電池持ちはとても優秀です。

センサーを使った画面の自動明るさ調整、常時表示オン、リフレッシュレートは最大120Hzというバッテリーにとっては過酷な設定で11時30分ごろから使用開始。
Wi-Fiに接続した状態でNBAをピクチャー・イン・ピクチャーで視聴しながら、Pixel 9aのレビュー記事に必要な気づきをNotionにメモしていました。
その後、電車で移動中もNothing Ear (a)に接続しながらNBA視聴を継続。1時間ほど経っても残量は90%までしか減っていません。
午後はカメラテスト。写真を撮りながら、インスタのストーリーやXに写真を投稿。合計で300枚以上の写真を撮り、ストリーミングで2GBを消費した19時を過ぎても残量は45%をキープ。実際に電池持ちが切れたのは翌日の昼でした。
バッテリーの大容量化にあわせて、充電性能も18Wから23Wに強化されています。
実際に充電したところ、約30分の充電で50%に到達し、1時間45分でフル充電になりました。充電パッドのワイヤレス充電にも対応していますが、出力は控えめな7.5Wのため、就寝中などスマホを使わない時間帯での使用が多くなりそうです。
カメラ:Pixel 9との画質に違いは?

Pixel 9aは、バッテリー容量を大幅に増やしながらもデュアルカメラを維持しています。
iPhone 16eのようにカメラの数を減らしてスペースを生み出すのではなく、Googleは薄型のプラスチックOLEDを採用することで、大容量化するためのスペースを確保したことで、カメラとバッテリーの両立を実現しました。
ただし、気になる点もあります。広角カメラのセンサーサイズはPixel 9よりも小さく、暗所撮影への影響が懸念されました。センサーの大きさは光の取り込み量に直結するため、画質に与える影響は小さくありません。
とはいえ、Google Pixelのカメラは、ソフトウェア処理によって画質を高めている点で定評があります。実際にPixel 9と撮り比べてみると、等倍では明るさやノイズに大きな違いは見られませんでしたが、2倍ズームではPixel 9aの方が明らかにノイズが目立ちました。


また、Pixel 9aはウルトラHDRに対応。ウルトラHDRに対応するOS、ディスプレイ、インスタなどのアプリでは、明暗差のあるシーンでも自然な立体感と鮮やかさがしっかり表現されます。ただし、PCなどの非対応環境では、やや色味が異なって見えることがあります。
さらに今作から新たにマクロ撮影にも対応しています。スマホのマクロ撮影では、一般的に超広角や望遠レンズを使ってマクロ撮影を行いますが、Pixel 9aでは広角カメラでマクロ撮影を実現しています。

超広角カメラでマクロ撮影を実現するPixel 9の方が、より遠く・より近くの距離で撮影が可能。影が入りづらいなど、撮りやすさではPixel 9が上回ります。
作例集











Google Tensor G4:発熱対策にベイパーチャンバーを搭載
高画質な写真やAIによる写真補正を支えているのが、Google独自のチップセットです。
Pixel 9aには、上位モデルと同じTensor G4を搭載。CPUとGPUの性能は上位モデルと変わらず、ウェブブラウジングが20%、アプリの起動も17%高速化されています。
Google Tensor G4 | |
---|---|
Geekbench 6 |
|
3DMark – WildLifeExtreme | 2408 |
3DMark – WLE Stress |
|
AnTuTu |
|
ハイエンドでは物足りない性能も、この価格帯なら満足。また、Google Tensorは、ドライバの最新化によってグラフィック性能が大きく向上しています。
実際の使用感は概ね満足ではあるものの、8GBのメモリが影響なのか、ピクチャインピクチャーで動画を視聴しながら別のアプリを利用すると動作がカクつくことがありました。
前世代までの課題だった発熱。Pixel 9aには、ベイパーチャンバーが搭載されています。どれほどの効果があるのかわかりませんが、少なくともレビュー期間の約1週間、深刻な発熱を感じたことはありません。
Tensor G4の特最大の強みはやはりAIです。Pixel 9aでも以下のようなGoogle Pixel独自のAI機能を活用できます。
- 写真から不要なものを消すことができる「消しゴムマジック」
- 生成AIを活用した編集機能の「編集マジック」
- 過去に撮影した写真もクリアに蘇る「ぼけ補正」
- AIが発信者の名前と用件を確認する「通話スクリーニング」
- 録音した音声を高精度かつリアルタイムで文字起こしする「レコーダー」アプリ
- 画像生成アプリ「Pixelスタジオ」
これらのAI機能は、より高度なAI処理が可能なクラウドAIと、高いプライバシーのデータも安全に処理できるオンデバイスAIによって実現されています。さらに、Pixel 9aは、より高度なAI処理を実現する「Gemini Nano」に対応しています。
注意点はやはりメモリの容量です。12GBを搭載したPixel 9と違って、以下のような機能は利用できません
- Pixelスクリーンショット:スクショをAIが解析・整理し、後から簡単に検索・利用できる機能
- 通話メモ:通話内容をAIが記録・要約する機能(※現時点で日本語非対応)
これは、テキストだけでなく、画像や音声を組み合わせて入力できる「マルチモーダル」に対応していないことが原因。今後登場する一部のAI機能がPixel 9aで利用できない可能性もあります。
ディスプレイ:Aシリーズ最高の明るさに
Pixel 9aは、バッテリーの大容量化のために採用したプラスチックOLEDによって、Google Pixel Aシリーズとして最高の明るさを実現しています。日差しの強い日中でも視認性が高く、画面が見づらいと感じることはありませんでした。

リフレッシュレートは最大120Hzに対応。スクロールはなめらかで上位モデルと同等の表示体験を実現しています。
ディスプレイ周りの黒いフチ(ベゼル)は、Pixel 9 / 9 Proよりも明らかに太め。デザイン面ではやや不恰好に見えますが、上下左右すべてが同じ幅でそろっているため、Pixel 8aと比べると全体の印象はすっきりしています。
ディスプレイには光学式の指紋認証センサーが内蔵されています。筆者は大きな違いを感じないものの、仕様上では超音波式を採用するPixel 9の方が速度・精度は優秀なはずです。
また、Pixel 9aは顔認証にも対応しています。コロナ禍が終わって初めてスマホを買い替える人も多いと思いでしょう。
マスク着用時のストレスから解放された今、花粉症などでマスクが手放せない人を除けば、顔認証の方がスムーズに感じる人も多いと思います。 また、顔認証はロック解除だけでなく、決済やアプリロックの解除にも利用できるため、日常的に使いやすく進化しています。
まとめ
Pixel 9aの購入を検討している人の多くは、Pixel 9とどちらを購入するか迷っているはずです。
Pixel 9aは、高性能なカメラや大容量メモリ、そして今後追加される最新のオンデバイスAI機能と引き換えに、シリーズ最大の5,100mAhの大容量バッテリーと、Google Tensor G4の発熱を抑えるベイパーチャンバーを獲得したモデルといえます。
また、7年間のソフトウェアアップデート保証、ディスプレイ内蔵の指紋認証と顔認証、最新のGoogle Tensor G4など、Pixel 9と共通する点も多くあります。
Googleストアの販売価格は77,900円。これだけの充実度ながらPixel 9よりも約5万円近く購入できることを考えれば、コストパフォーマンスの高さは圧倒的です。
また、2025年春に発売された5万円前後のスマートフォンと比較しても、Pixel 9aは魅力的です。
- POCO X7 Pro:より高性能なSnapdragon 8 Gen 3を搭載。おサイフケータイ、eSIM、ワイヤレス充電には非対応
- Nothing Phone (3a):デザインや最大4倍のクロップズームなど望遠カメラが魅力的。チップの性能やワイヤレス充電でPixel 9にアドバンテージあり
さらに、Pixel 9aは3大キャリアからも販売されており、端末購入サポートを利用することで月額52円から購入することも可能です。
iPhoneに目を向けても、常時表示なし・60Hz表示・シングルカメラ構成の「iPhone 16e」が約10万円であることを考えると、Pixel 9aが約8万円という価格でここまでの機能を詰め込んでいるのは、まさに驚異的なコスパと言えます。
この春、スマホの買い替えを検討しているなら外せない1台で、選択肢の中でも真っ先に候補に挙げたい1台です。
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