Nothing Phone (3a) レビュー
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア『携帯総合研究所』の創設者・運営者です。記事の執筆をはじめ、各キャリアやメーカーへの取材、素材の撮影も行なっています。システムエンジニアとしての経験を活かし、HTML・CSS・JavaScript・PHP・Pythonを用いたサイトデザインやテーマの構築を行っています。また、4キャリアの料金比較ができるシミュレーターの開発も担当しています。

ガラスで覆われた背面に、音と連動して強烈なインパクトを残すLEDを埋め込んだスケルトンボディ。そんな斬新なデザインを採用したNothing Phoneは、登場と同時に世界中で大きな注目を集めました。
注目度が高い分、自然と期待値も上がりますが、CEOのカールペイとNothing Technologyはその期待にしっかり応えてきました。
創業からわずか4年で、スマートフォンやオーディオ製品を800万台以上販売。日本では公式サイトへのアクセス数が前年同期比で4倍に増加するなど、その人気は確実に広がりを見せています。
派手な話題性の裏で、Nothingは着実に信頼も積み重ねてきました。製品そのものの評価もちろん、Nothing Phone (1)に約束されていた最大3年間のOSアップデート保証も、このまま行けば無事、完走するでしょう。
期待を超え、信頼を築き、多くのファンを獲得してきたNothingが、次に送り出したのは「Nothing Phone (3a)」です。
AIを本格的に取り入れることで、“テクノロジーを再び楽しく”の理念を、さらに前進させたモデルになっています。
Nothing Japan
洗練されたデザイン
Nothing Phoneシリーズは、デザイン性も高く評価されてきました。
スケルトンボディやGlyphインターフェースなど、見た目のインパクトと機能性を両立したひと目でNothing Phoneとわかるオリジナリティが多くのファンを惹きつけています。


一方、ミッドレンジモデルのNothing Phone (2a)は、背面中央にカメラを2つ並べるという大胆なレイアウトを採用。そのユニークさから話題を集める一方で、好みが分かれていました。


Nothing Phone (3a)のデザインは大きくは変わっていません。フラットなフレームに、前面・背面ともフラットなパネルを組み合わせた直線的なデザインです。
“豚鼻”と表現されることもあったカメラのレイアウトは、3つのレンズが横一列に並ぶようになったことでバランスの取れた仕上がりに。より洗練された印象になりました。
背面の素材は従来のポリカーボネートから光沢仕上げのガラスに変わったものの、不思議と質感はこれまでと同じ。ただし、指紋やホコリがつきにくくなったのは嬉しいアップデートです。
カラーはホワイト、ブラック、ブルーの3色から選べます。ブルーは楽天モバイルの限定カラーです。

5万円台のトリプルカメラ、実力は?
“ハイエンドの証”とも言えるトリプルカメラ。Nothing Phone (3a)は、その常識を覆すように、ミッドレンジの価格帯でこの構成を実現しました。
望遠カメラを追加したことで、2倍の光学ズームや4倍のロスレスズームに対応し、これまでよりも一歩踏み込んだ撮影体験を実現しています。

これまでのNothing Phoneのカメラは価格相応といった印象です。このようなカメラの評判について、NothingはPhone (3a)のローンチイベントで「悔しい」と率直に述べるとともに、Phone (3a)のカメラについて「非常にいいものになりました」と自信をのぞかせていました。
Phone (2a)、Phone (2)と撮り比べしてみましたが、Nothingの自信も納得できるほど画質が格段に向上しています。
作例は以下。左からPhone (3a)、(2a)、(2)の順に並べています。















一方でフレアに弱く、室内のそこまで明るくない電球ですらフレアが発生するほど。プレビューと撮影後の写真に大きな違いがあるのも気になりました。Googleと共同開発したウルトラXDRやバージョンアップされたISPの代償なのかもしれませんが、撮影体験としては良いものではありません。
8MPにダウングレードした超広角カメラ、どれほど画質がダウンしているのか心配でしたが、思ったよりも解像感はキープされています。超広角カメラに切り替えた途端に画質が劣化するミッドレンジスマホならではの現象もありません。
撮影モードはポートレートモードが優秀でした。背景を自然にぼかしながら被写体をパキッとした解像感で撮影できます。
マクロモードには対応していないものの、望遠レンズは25cmまで近づいて撮影が可能。そこから4倍のクロップズームができるため、ほぼマクロが楽しめます。ただ、ピントが合っているのか分かりづらいため、何枚か写真を無駄に取る必要がありました。

新たにプリセット機能が追加されました。
これはいつでも決まった設定で撮影できるというもの。お気に入りのプリセットをデフォルトに設定すると、プリセットが適用された状態でカメラが起動します。プリセットを自作してQRコードで共有することもできます。



Snapdragon 7s Gen 3の性能は?
Snapdragon 7s Gen 3の採用が事前発表されたとき、Snapdragonの復活を喜ぶ声もありましたが、パフォーマンスに対する懸念の声も多く聞かれました。
性能を数値化した各種ベンチマークスコアは以下のとおり。ハイエンドモデルからは大きく離されていて、グラフィックに関しては前モデルに比べて性能が低下している結果も確認できました。
Nothing Phone (3a) | Nothing Phone (2a) | |
---|---|---|
Geekbench 6 |
|
|
3DMark WLE | 1056 | 1154 |
3DMark WLE Stress |
|
|
AnTuTu |
|
|
メモリは8GBモデルと12GBモデルが用意されています。
12GBモデルでLightroomを使ってRAW編集したところモタつきなどはなく快適に編集できました。ただし、ゲームではグラフィック処理でモタつく現象も確認しています。
一方で、AIの処理性能は92%も高速化されており、将来的に追加されるAIの新機能にも対応できるのではないでしょうか。AIはカメラの画質向上にも貢献しているはずです。
AIを活用した“第2の記憶”スペース、Essential Space
昨年はNothing OSにChatGPTが統合されましたが、今年はNothing独自のAI機能としてEssential Space(エッセンシャルスペース)が提供されます。
Essential Spaceは、テキスト、音声、スクショ、カメラといったさまざまな方法で取ったメモを1つのアプリに集約できるAIツール。
これまではメモを取る方法によって、アプリを使い分ける必要があり、あとからメモを探すのに手間がかかりましたが、Essential Spaceがこれを解決します。
もちろん、メモを1つにまとめるだけではなく、AIが活用されています。
例えば、音声メモは文字起こし機能付きのため、どこでもメモを見返すことができます。スクショやカメラは画像認識によって、AIで情報を読み取って記憶に反映します。



メモを取る方法は簡単。右側面に備えられた専用ボタンEssential Key(エッセンシャルキー)を1回押すと、表示している画面をスクショしてテキストを添えてメモが取れます。音声でメモするときは長押しです。
2回押すとこれまで保存したメモが表示されます。
不満はメモに情報を添えられるのはメモを取るときだけということ。あとからメモに画像を追加するなど、編集はできないようです。今のところ専用ボタンのEssential KeyがNothing Phone (5)にも搭載されるのか懐疑的ですが、現在は先行アクセス版となっているため、正式版までの改善に期待です。
なお、先行発売されている海外では、メモができる回数には制限があると報告されています。将来的には有料化を検討しているのでしょうか。
Nothing OS 3
Nothing Phone (3a)には、Android 15ベースの独自インターフェース「Nothing OS 3」が搭載されています。
モノトーンでアプリ名すら表示されないシンプルなアイコン、限定的に日本語に対応したドット調のフォントなど、Nothingの世界観を堪能できます。
また、クイック設定に手の伸ばさずホーム画面から機内モードや画面の回転、サイレントモードをオン/オフできるNothingウィジェット、データ通信量を確認できるクイック設定、ホーム画面に配置できるクローンアプリといった利便性も兼ね備えています。

不満はロック画面の常時表示機能で「常に表示」が利用できないことです。このオプションは、Phone (2) / (2a) / (1)で利用できますが、なぜかPhone (3a)では利用できません。
アプリドロワーには、OSがアプリをカテゴライズする「スマート」オプションが追加されていますが、アプリの振り分け方がイマイチ。SNSが社交と表示されるなど、日本語への最適化もされていません。ただ、ベータ版のため、今後改善されるでしょう。
まとめ
Nothing Phone (3a)の競合機種は、POCO X7 Pro、Google Pixel 9a、そしてiPhone 16eです。
その中でNothing Phone (3a)が優れているポイントを以下にまとめました。
- 6.77インチのビッグディスプレイ
- 4辺同一幅のベゼル
- 最大120Hzのリフレッシュレート
- 約60分でフル充電にできる最大50Wの急速充電(実測では最大30W)
- オリジナル性の高いスケルトンデザイン
- ミッドレンジでは珍しい望遠カメラ搭載
- おサイフケータイ(フェリカ)対応
- デュアルSIM・eSIM対応
また、3回のOSアップデートと6年間のセキュリティアップデートも保証されていて、長く安心して利用できます。
さらに、楽天モバイルで購入できることも大きなメリットです。楽天ポイントでの購入や割引適用が可能なほか、のりかえで楽天モバイルに初めて申し込みすると、最大20,000円分の楽天ポイントが還元されます。
「デザインにも機能にも妥協したくない。でも、価格は抑えたい」――そんな人にとって、Nothing Phone (3a)は非常に魅力的な選択肢です。

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