iPhone 17 Pro レビュー/これはProではない“プロトラ”
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア『携帯総合研究所』の創設者・運営者です。記事の執筆をはじめ、各キャリアやメーカーへの取材、素材の撮影も行なっています。システムエンジニアとしての経験を活かし、HTML・CSS・JavaScript・PHP・Pythonを用いたサイトデザインやテーマの構築を行っています。また、4キャリアの料金比較ができるシミュレーターの開発も担当しています。

今年、iPhoneのラインナップが大きく変わりました。
iPhone史上最薄・超軽量のAirが追加され、大画面で割安なPlusモデルが廃止に。
ただ、より多くの人に影響するのは人気の高いProモデルの大胆な変更かもしれません。これまでの華奢でラグジュアリーな見た目から無骨でワイルドな見た目に激変。本体サイズも厚く、大きくなりました。
アルミニウムの塊から削り出した新しいボディに、より大きなバッテリーと優れた放熱性を実現するベイパーチャンバーを初搭載。カメラはズーム性能が大きく進化しています。
犠牲になったのは見た目と操作性です。ただ、Appleはその2点において最も優れた選択肢も用意しています。それがiPhone Airです。
「見た目もカメラも優れたものはないの?」ーー残念ながらありません。見た目か、それともカメラか。Appleも選択を迫っています。
デザイン
正直、iPhone 17 Proの第一印象は最悪でした。リーク段階の画像を見たときも、安価な中華スマートフォンと見間違えるほど酷いデザインと感じました。
とはいえAppleなら綺麗にまとめてくるだろうと期待していましたが、ぼぼそのまま発表されることに。

正式発表から数日経ち、発売日にApple Storeで実機に触れても印象は変わらず。むしろ、完成度の高いiPhone Airに触れたことで、相対的に印象が悪化。
そして手元に届き、開封して数日後に思ったのは「人は見た目に慣れるまで3日かかる」という古くからの言い回しは半分嘘ということ。実際には5日ほど必要でした。
さらに手にして1週間以上が経ったいま、もう何も気にならなくなっています。結局、見た目なんてそんなもので、本当に大切なのは中身だと改めて気づかされます。
多くの人が拒否反応を示しているのは、背面上部にある“プラトー”と呼ばれるエリアです。
もともと批判の的になりやすかったカメラの出っ張りが横長に拡大。見た目の存在感がさらに強まりました。
Appleは、この横長のボックスに、前後4つのカメラやAppleシリコンといった重要な部品を集め、それらを熱伝導率の高いアルミニウムで覆うことで放熱性能を高めるだけでなく、大容量バッテリーのために広大なスペースを確保しました。

プラトーの下はMagSafe対応のためガラス仕上げになっており、その素材の違いからツートンに見えてしまいます。このデザインに拒否反応を示す人も少なくありません。
Appleならもう少しワントーンに寄せられたのでは?とも思います。
実際、ディープブルーは最もワントーンに近く、シルバーはホワイトとのコントラストでツートン感が強め。コズミックオレンジはその中間といった印象で、Appleはあえてツートンデザインを選び、そのなかでバリエーションを持たせたように感じます。
プラトーとツートンによって激変したデザインには合理的な理由がありますが、天面の樹脂製パーツは事情が異なります。
これは5Gミリ波用のアンテナですが、日本モデルはミリ波には対応していないため、デザイン性を損なうだけの存在になっています。これまでの日本モデルはミリ波用のアンテナが削られていましたが、今回はコストの都合なのか、そのまま残されたようです。

ワイルドな変化を象徴するコズミックオレンジ
今年ほど色選びに頭を悩ませた年はありません。カラーバリエーションはコズミックオレンジ、シルバー、ディープブルーの3色。なんとブラックがない…!!
@sakakuray #iPhone17Pro ♬ it boy – bbno$
「ケースをつけるから何色でも良い」と思ってる人もいるかもしれませんが、ディスプレイを見るときも常にフレームの色が目に入り、没入感が損なわれます。
消去法で悩みに悩んだ末に、最初は印象が良くなかったコズミックオレンジを選択しました。
ツートンが最も薄く、フレームの色も目立たないディープブルーとの2択で迷いましたが、リニューアルされたProモデルを最も体現しているのは、このコズミックオレンジだと思います。
Pro体験の対価は「+29g」
フレームの素材がチタンよりも軽いアルミニウムに変わったことで、大幅な軽量化を期待していました。
ステンレススチールからチタンに移行したことで、Proモデル史上最軽量となった「iPhone 15 Pro」のような軽快さが戻ってくる――そう思っていましたが、結果は逆で重量化。
重さは200gを超え、iPhone 14 Proと同じ204gまで逆戻りしています。
実際、iPhone 17 Proは長時間持って操作していると手首にずっしりとした重みを感じます。ここ最近はiPhone Airと併用していますが、カメラを使わない場面ではProに手が伸びないのが正直なところです。

無印か、Proか、それともAirか──「重さ」はモデル選びにおいて大きな決め手になります。
トリプルカメラやProRAW、高性能チップ、ProMotionディスプレイといった“Pro体験”を得るために必要な重さは、iPhone 15シリーズでは無印に+16gが必要でした。
しかしiPhone 17シリーズでは+29gまで増加し、より多くの対価を支払う必要があります。さらに、今年はProMotionディスプレイが無印にも搭載されたことで、Pro体験の価値は昨年よりも確実に下がっています。
耐久性
この無骨な見た目は耐久性に優れていそうな雰囲気を纏っていますが、フレームの素材はチタンよりも弱いアルミニウムです。
発売日とその翌日、AirPods Pro 3とiPhone 17 Proの受け取りのために、Apple Storeで展示機を見ましたが、すでに背面のガラスやプラトーが凹み、塗装が剥がれていました。
これはApple StoreのMagSafeスタンドが市販品と違って吸着させにくいこと。もうひとつは充電パッドの角が金属のため、引っかけて傷がついてしまうことが主な理由と考えられます。新しいApple 銀座では、応急的に金属部分をラバーで覆うことで対策されています。

ディスプレイには、Appleいわくキズへの耐性が3倍に向上した新しいCeramic Shield 2が採用されています。
普段、ケースも保護フィルムも使わずにiPhoneをそのまま持ち歩いていますが、これまでのモデルは落とさなくても、ぶつけなくても数週間後で画面にキズが入っていることが多く、「正直そこまで強くないのでは」と感じてきました。今回もあまり期待せずに使い始めましたが、購入から2週間がたちましたが、今のところキズは確認できていません。
写り込みを抑える反射防止コーティングも施されています。映り込みは完全に防げるわけではなく、iPhone 16 Proと並べて比べるとようやく改善がわかる程度の効果です。
カメラ
iPhone 17 Proを選ぶ最大の理由はカメラです。ついにすべてのカメラが48MP Fusionになりました。
- 1つのカメラで複数の画角をサポート
- 通常時は24MP出力。露出が最適にコントロールされた12MPとディテールの優れた48MPを合成したいいとこ取り
- 48MP撮影も可能
- イメージセンサーの中心を12MPで切り抜いた光学品質のx2倍ズームにも対応
カメラアプリには「.5、1、2、4、8」といった5つのボタンが並び、どのカメラに切り替えても同じ画素数で撮影可能。画質も大きく変わらないことを意味します。

大幅に強化された望遠カメラは、光学4倍ズームと高画素センサーを活用した光学品質の8倍ズームに対応。センサーサイズが56%拡大したことで暗所でもより鮮明に撮影できます。
4倍の望遠圧縮で捉えた写真はスマホで撮影したものとは思えないほどよく撮れます。




光学ズームは5倍から4倍へとデチューンされていますが、使い勝手は向上しています。
iPhone 16 Proは2倍からいきなり5倍に飛ぶため、画角の差が大きすぎて使いにくく、利用シーンも主に屋外に限られていました。
AirではなくProを選ぶ理由
ここ数日、左ポケットにiPhone Air、右ポケットにはiPhone 17 Proを入れて過ごしています。
ブラウジングやSNSの投稿、記事の更新、動画視聴といったライトな使い方をするときは左ポケットが空きますが、カメラを使うときは右ポケットが空になります。
iPhone Airのレビューでもお伝えしたように、シングルカメラのiPhone Airもかなり良く撮れます。ただ、iPhone 17 Proは撮影オプションが豊富で、ストレスなく思い通りに撮影できるのが大きな強みです。
例えば、iPhone Airには超広角も望遠もありません。日常を切り取るだけなら十分ですが、本格的に撮影したい人は間違いなくiPhone 17 Proを選ぶべきです。あとからカメラを追加することはできません。





フレア問題は解決せず
一方で夜間撮影で問題となっているフレアは改善されていません。8Kビデオ撮影にも対応していません。
足りない部分もあれば、トゥーマッチな部分もあります。
個人的にトリプルカメラとProRAWがあればそれで十分ですが、撮影後にISO感度やホワイトバランスを自在に調整できるProRes RAWやマルチデバイス撮影で同期を保てるGenLockといったクリエイター向けの高度な機能も強化されています。



縦向きでも横長で撮れる革新的なフロントカメラ
フロントカメラには、新しい八角形(有効形状は四角形)のセンサーが採用されています。これは革新的な発明でした。
自撮りやグループショットを撮るとき、多くの人がこんなルーティンを経験してきたはずです。
縦向きでカメラを起動→画角に収まらない→拡大ボタンをタップしてもダメ→横向きにしてようやくシャッターボタンを押す、という流れを何度も何度も繰り返してきました。
新しいiPhoneなら、縦向きで画角に収まらなかった場合、AIが自動で検知し、横長の写真として撮影できるように画角を切り替えてくれます。特別なセンサーが必要になりますが、いずれ他社も追随してくるでしょう。
さらに、バックカメラとフロントカメラの映像を同時に記録できる「デュアルキャプチャ」にも対応しました。
新しいApple 銀座の先行内覧会をデュアルキャプチャで撮影してみましたが、この機能自体はサードパーティ製アプリでも提供されていたため目新しさはありません。それでも、標準カメラで手軽に使えるようになったのは大きなメリットです。
🗣️新しいApple銀座の見どころ紹介
🔹1F、映えるiPhoneの展示デザイン!!開放感のある吹き抜けも🔹2Fに東京初のピックアップカウンター!!🔹3FでNumber_iの特別コラボセッション。壁のディスプレイにMVが少し流れるのでファンの方は撮り忘れなく!!🔹4Fは修理等できるジーニアスバー
👇詳細はリプにて https://t.co/WxcTRFRiw5 pic.twitter.com/3GvvHnneSN
— Yusuke Sakakura🍎携帯総合研究所 (@xeno_twit) September 25, 2025
カメラコントロールは便利だが、、、
1年前に追加されたカメラコントロールも評価しておきましょう。
Appleさえも発表会の中で使用しなかったのは驚きでしたが、カメラの起動ボタンとしてはかなり便利です。
シャッターチャンスを逃さないために、ポケットの中でボタンを押してカメラを起動。そのまま被写体にiPhoneを向けてボタンを押すだけでスムーズに撮影できす。
一方で、スライド操作によるコントロールは最初の印象どおりです。正確に操作するのは難しく、意図せず触れてしまい、カメラ設定が変わるため、コントロール機能は即オフにしました。
性能と放熱
iPhone 17 ProにはA19 Proが搭載されています。
発表時点で最速のスマートフォンCPUと、MacBook Proに匹敵にするGPUを備え、動作は軽快で高速な文字入力にも遅れることなく追従し、動画も撮影から編集までサクサクこなせます。
正直なところ体感はiPhone 16 Proと大きく変わりませんが、発熱に関しては確かに改善されています。
最大のアップデートはiPhone初のベイパーチャンバーを搭載したことです。
- 液体を内包した金属パーツ
- チップから発生した熱によって金属内部の液体が気化して温度の低いところ移動する
- 温度の低いところで液体に戻り、再び高温部に戻る
- この循環を繰り返して熱を効率的に拡散する
さらに、このベイパーチャンバーで拡散された熱は、レーザー溶接されたアルミニウムUnibodyに伝わり、ボディ全体へ広がっていきます。
iPhone 16 Proは、チップ周辺が局所的に熱くなることがありましたが、iPhone 17 Proでは、熱が特定の部分に集中せず、全体に拡散されることがわかります。

そのおかげで4K/60fpsといった負荷のかかる長時間撮影や動画編集を続けても、性能の落ち込みを感じにくくなっています。
4K/60fpsで動画撮影 | iPhone 17 Pro | iPhone 16 Pro |
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本体中央 |
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チップ周辺 |
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バッテリー
SIMカードトレイの廃止に加え、プラトーに主要部品を集約して他のスペースをバッテリーに割り当てる内部構造の再設計により、バッテリーが大容量化しています。
新しいApple銀座のオープン日を取材した日のバッテリーレポートを紹介します。
この日は朝7時に起きてiPhone 17 Proをケーブルから抜いて利用を開始。AirPods Pro 3で動画を見ながら電車に乗ってApple銀座まで移動しました。
多くのAppleファンが並ぶ様子やティム・クックCEOがドアをオープンする様子を写真や動画に収め、一眼レフカメラで撮影した写真を取り込み、Lightroomで編集してSNSに投稿していましたが、夕方帰宅するまでバッテリーが20%を切ることはありませんでした。
iPhone 16 Proはもっとソフトな取材でもバッテリーが切れていたので、電池持ちの向上は確かに実感できます。
さらに、上記はiOS 26の新機能「適応型電力制御」はオフにした状態で計測したものです。
同機能をオンにすると、ディスプレイの明るさを下げたり、一部のアクティビティの処理時間を長くするなど、パフォーマンス調整によって電池持ちを伸ばすことができます。

充電性能も進化しました。
USB-C充電は最大40Wに対応。約20分で50%、約30分で70%まで充電が可能です。これなら寝る前に充電を忘れても家を出かけるまでのわずかな時間で1日使うのに十分な量をチャージできます。
ワイヤレス充電はQi2.2をサポートしたことで、MagSafe充電器以外でも最大25W出力で充電できます。
まとめ:Proか、Airか、それとも両方か

iPhone 17 Proは、デザインと性能のバランスを取った従来のProモデルではなく、性能に大きく振ったモデルに進化しました。
重さが気にならない人にとっては待望の存在でしょう。
カメラはズーム性能が大幅に向上し、電池持ちも改善。ここ数年課題だった発熱も解消され、長時間の動画撮影やゲームでも安定したパフォーマンスを発揮します。これまでのProモデルが物足りなかった人にとってベストな選択肢です。
一方で、フレームは耐久性で劣るアルミニウム、カメラは8K撮影やAIを活用した100倍ズームに非対応で、数億画素のセンサーもありません。Galaxy S25 UltraのSペンのような唯一無二の機能はなく、Apple Intelligenceも出遅れています。
明らかにこれまでのProとは違うものの、完全なUltraにもなりきれていない――あえて言うなら、ProとUltraの間にある“Protra(プロトラ)”といった印象です。それでも現時点で最高のiPhoneを求めるなら、この選択に間違いありません。
これだけ書いても多くの人は、重くて最高性能のProを選ぶか、軽くてカメラ性能が控えめのAirを選ぶか迷っているはずです。
iPhone Airのレビューを読んでも決断できないようであれば、どちらもApple Storeで購入して2週間後にどちらを返品するかを悩むのも良いでしょう。
ただ、筆者のようにどちらもお気に入りとなって返品できず困ることになっても責任は取れません。

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