Apple Watch Ultra 3/Seriesユーザーにウルトラは必要か?
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア『携帯総合研究所』の創設者・運営者です。記事の執筆をはじめ、各キャリアやメーカーへの取材、素材の撮影も行なっています。システムエンジニアとしての経験を活かし、HTML・CSS・JavaScript・PHP・Pythonを用いたサイトデザインやテーマの構築を行っています。また、4キャリアの料金比較ができるシミュレーターの開発も担当しています。

本当に必要なの?でも気になるな、、、
これがApple Watch Ultraシリーズに対する率直なイメージでした。山に登らない、海に潜らない、マラソンやトライアスロンをするわけでもない。
そんな自分にとってのベストな選択はApple Watch Series。そう思ってずっとSeriesを選んできました。
でも、なぜか気になる。それは無骨なデザインなのか、分厚いチタンの質感なのか、それとも――。
その“気になる”を確かめるいい機会をもらい、Apple Watch Ultra 3を約2週間使ってみました。
Apple Japan
惹かれる無骨でワイルドなデザイン
Apple Watchで使う機能は決済とジムでのワークアウト、睡眠のトラッキングがほとんど、という人は多いでしょう。
それでもApple Watch Ultra 3を選ぶ理由があるとすれば、それはやはりデザインです。
スタイリッシュでシンプルなApple Watch Seriesに対して、Apple Watch Ultraは真逆。無骨でワイルド、道具的で魅力的な見た目をしています。
一般的にガジェットは小さく軽い方が好まれますが、腕時計の世界では“デカい”方に惹かれることも多い。Seriesのスマートさとは違う、着けている満足感があります。

マットな質感のチタニウムボディは耐久性にも優れます。
実際、JerryRigEverythingの厳しい耐久テストでは、鍵で強くこすっても傷は付かず、ネジでようやく細かな傷がつく程度でした。
一方、筆者が使用しているApple Watch Seriesのジェットブラックは、特に痛めつけたわけでもありませんが、使用から1年ほどでデジタルクラウンや裏蓋周りの塗装が剥がれ、ポツポツと白っぽいアルミニウムの下地が見えています。
Apple Watch Ultraのブラックチタニウムは初登場から1年経ってもそういった声は聞こえてこないので、見た目どおり高耐久でガシガシ使えそうです。

最も懸念していたのは、睡眠時の装着感です。
できるだけ何も付けずに寝たいので、このデカいApple Watch Ultra 3をつけたまま寝られるのか?と心配でした。
しかし、実際使ってみるとまったく問題ナシ。大きさからくる存在感は意外と気にならず、睡眠中に外したくなるような違和感もありません。
また、watchOS 26で睡眠スコアに対応したことで、朝起きたときにどれぐらい充実した睡眠が取れたかを100点満点でひと目でわかるようになりました。
ちなみに、1台のiPhoneに複数のApple Watchを紐づけて使い分けることも可能です。
普段はApple Watch Ultra 3を使い、寝るときだけこれまで使っていたApple Watchや、Apple Watch SEなどの軽量モデルを使って睡眠を計測するといった運用もおすすめ。こうした使い分けによって、悩ましい充電のタイミング問題も解決できます。
Hermèsまで選べる。Ultraでも充実したバンド
iPhoneは純正ケースのバリエーションが少なく、最上位モデルのPro Maxではサードパーティ製の選択肢も限られるため、お気に入りのケースを探すのに苦労します。
一方、Apple Watch Ultraは純正バンドのラインナップが充実しています。ワークアウトやアウトドア用途だけでなく、日常にも自然になじむ4種類のバンドが用意されており、どんなシーンにも合わせやすいのが魅力です。
さらに、同じバンドでもラグやバックルのカラーを本体とそろえられるなど、細部のデザインにも抜かりがありません。目立たない部分まで作り込まれていて統一感を楽しめます。
2種類あるHermèsバンドも選べば、ワイルドなUltraも高級感のあるファッションアイテムにもなります。
Hermèsバンドのラグはナチュラルチタニウムと同色のため、購入を検討している場合は本体カラーもナチュラルチタニウムを選ぶ方が良いでしょう。

今回のレビューでは、軽量で柔軟性のあるナイロン素材の「トレイルループ」を使用しました。
睡眠時でも違和感なく、まったく気にならなかったのは、このバンドの快適さによるところも大きいです。超薄型で通気性が高く、暑い日でも蒸れにくいため、長時間でも快適に使えました。
Series向けのスポーツループは圧迫感が強く、バンドの端が固く織り込まれているため、かゆくなりがちですが、トレイルループはバンドの全域が柔らかく、肌触りも心地良いので、かゆみなどの不快感が一切ありません。Series向けにも発売してほしいと思うほどの仕上がりです。
さらに、暗い場所でも目立つように反射糸が織り込まれており、夜のウォーキングやランニングでも安心。ワークアウトから日常まで、この1本で完結できる万能バンドです。
常に秒を刻む、史上最大のディスプレイ
意外なことにApple Watch Ultra 2の表示領域はSeries 10を下回っていました。
しかし、ベゼルが24%もスリム化したUltra 3はケースサイズをそのままに、表示領域が一気に拡大し、Apple Watch史上最大のディスプレイへと進化しています。
数値上では表示領域の差はわずか2%ですが、Seriesがカーブエッジを採用しているのに対し、Ultraはフラットなディスプレイのため、実際に使ってみると数字以上に大きく感じます。

ディスプレイ技術もLTPO2からLTPO3へ進化。電力効率がより高くなり、対応する文字盤では、腕を上げなくても文字盤が秒ごとに更新されるようになりました。
これはわずかなアップデートのようですが、秒針を見たいときは電車に間に合うかどうかなど、いつもよりストレスを感じやすい状況にあります。その小さなストレスがなくなることで、心理的な負担の軽減は想像以上に大きいと感じました。
また、Seriesユーザーとして羨ましくなったのが、Apple Watch Ultra専用の文字盤「Ultraモジュラー」です。
モジュラー系の文字盤は便利だけど見た目がちょっと、、、と感じるものが多いですが、Ultraモジュラーは6つのコンプリケーションを配置できるほか、秒表示に対応。そしてデザイン性も高い文字盤でした。これもSeries向けに追加して欲しいところ。

そういえば、Apple Watchが初めて登場した10年前のことを思い返すと、腕時計から乗り換えようとした少なくない人が「秒針が動かないのは腕時計としてどうなの?」と不満の声を述べてApple Watchの使用を断念したのを覚えています。
Apple Watch Ultra 3だけでなく、割安なSeries 11/10も同じ仕様になった今、昔諦めた人も、もう一度乗り換えを検討してみる価値はあります。
Seriesユーザーが選ぶ最大の理由は電池持ち
スマートウォッチを導入できない理由として、よく挙げられるのが電池持ちです。
Apple Watch Ultra 3は数値上では36時間から42時間に延びました。実際のところはどうでしょうか――運動を伴わない場合、Apple Watch Seriesは1.5日〜2日持ちますが、Apple Watch Ultra 3は3日分の睡眠計測が可能な日もありました。
取材で一日中外を歩き回った日でも、朝に充電器から外してから夜に帰宅するまで、ナビやウォーキングを使用。さらにそのまま睡眠トラッキングを行い、翌日の15時になってもバッテリー残量は49%も残っていました。

1回のフル充電で1週間以上持つモデルも多いフィットネストラッカーと比べれば劣りますが、スマートウォッチとしては十分に魅力的。SeriesではなくUltraを選ぶ最大の理由にもなり得ます。
できるだけ1日中着けていたいApple Watchは充電スピードも重要なポイントです。Appleは80%まで約45分で充電できると案内しています。
実際に「充電上限の最適化」をオフにし、パッケージ付属の充電ケーブルと複数のPD対応・高出力充電器を使用したところ、50%までに約45分、フル充電には100分以上かかりました。
一方、同じ条件のPixel Watch 4は50%までに15分かからず、90%までわずか30分で到達。バッテリー容量の差が約140mAhあるとしても、Apple Watch Ultra 3の充電速度は遅く感じます。
nextpitもMacBook Air同梱の30W充電器でフル充電までに103分かかったと報告しています。その理由について、9V/2.2Aのプロファイルが必要ではないかと指摘しています。
実際、今回使用した充電器はいずれも9V/3A対応でした。通常であれば9V/2.2Aで高速充電されるはずですが、9V/2.2Aの固定プロファイルが必要なのか、その他の理由があるのか通常充電になっていたようです。
まとめ:すべてを使いこなせなくても、選ぶ理由がある
Apple Watch Ultraは本当に必要か?
動いたとしてもジムのワークアウト程度しか動かないのに、高額なApple Watch Ultraを選ぶのは宝の持ち腐れだと思っていました。
Apple Watch Ultraは、山に登り、夏には海に潜り、トライアスロンやマラソンに挑むような人にこそふさわしい――それがこれまでの考えでした。
2週間のレビュー期間を終えた今では、ジムでのワークアウトや睡眠トラッキング、決済機能の利用が中心で、3000ニトの明るいディスプレイ、高精度なデュアル周波数GPS、深さ2倍の耐水性能、より広範囲な高度計、単独での5Gと衛星通信、長押しで爆音のサイレンを鳴らすデュアルスピーカーやアクションボタンが必要なかったとしても――。
無骨でワイルドなデザイン、どこかにぶつけても傷を気にしなくていいチタニウムの高耐久ボディ、毎日の充電から解放してくれるハイスタミナのバッテリー、そしてUltra専用の文字盤に心を惹かれるなら、たとえ機能が自分にはトゥーマッチでも、Apple Watch Ultra 3はベストで必要な選択だと言える存在です。

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