Pixel 10 Pro Foldレビュー/薄型のFold 7追わず、無尽蔵のようなスタミナ実現
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア『携帯総合研究所』の創設者・運営者です。記事の執筆をはじめ、各キャリアやメーカーへの取材、素材の撮影も行なっています。システムエンジニアとしての経験を活かし、HTML・CSS・JavaScript・PHP・Pythonを用いたサイトデザインやテーマの構築を行っています。また、4キャリアの料金比較ができるシミュレーターの開発も担当しています。

スマートフォンに改善を求める人はいても、大きな進化まで期待する人はもう少ないかもしれません。
ただ、折りたたみスマホには、劇的な進化が求められています。1年前に劇的な進化を遂げたにも関わらず、翌年にも同じように進化しなければ、なぜか遅れているように感じます。
今年のMVPスマホ筆頭である「Galaxy Z Fold7」は、普通のスマホと変わらない薄さと軽さの折りたたみボディに、スマホとタブレットの機能を詰め込んで2in1の体験を最大化しました。
来年にはAppleも折りたたみスマホを発売すると噂されており、この分野でGoogleが確固たる地位を築くために、今のうちに強力なアドバンテージを作る必要があります。
Googleの最新折りたたみスマートフォン「Pixel 10 Pro Fold」はどうでしょうか。
発表に先立って約1週間使用する機会を得ましたが、昨年のような目を引く変化はありません。ただ多くの人がスマホに求める性能や機能に磨きをかけて折りたたみスマホの実用性を高めています。
真のMagSafe体験
今年最大級のアップデートのひとつがQi2にフル対応したことです。薄型の折りたたみスマホも漏れることなくフル対応です。
Qi2にフル対応とは、スマホ本体にマグネット機能を持たせたことを意味します。
これまでもケースにマグネット機能を備えたQi2 ReadyやサードパーティのエセMagSafeもありましたが、スマホ本体にマグネット機能まで備えたAndroidスマホは日本未発売のHMD Skylineだけでした。
それなりにシェアのあるAndroidスマートフォンがついにQi2にフル対応したことになります。ケースによってスマホが大きくなったり、重くなることを嫌う人にとっては待望となる真のMagSafe体験です。
Googleが素晴らしかったのは、ただマグネット機能やPixelsnapが使えると発表するのではなく「MagSafeとの互換性がある」と明言したことです。
これにより、Pixel 10シリーズのユーザーは、iPhone向けに発売されたMagSafeアクセサリーも安心して購入することができます。

Google Pixel 10シリーズの発売から1ヶ月強が経った今、マグネット体験はすっかり欠かせないものになりました。
PixelsnapリングスタンドやPixelsnap充電器(スタンド付き)などの純正品やMagSafe製品を購入しましたが、どれも1日とて使わない日はありません。
特に250gを超えるPixle 10 Pro Foldを使うにあたって、MagSafeのスマホリングは欠かせないものです。
通常のスマホリングが活躍するのは手に持っているときだけですが、大型のリングを備えたPixelsnapリングスタンドは、動画視聴やビデオ通話にも便利なスタンドとして使うこともできます。iPhoneでも使えるので見た目を気にしない人はぜひ。

無尽蔵のようなスタミナ
マグネット機能の追加で便利になっただけでなく、ワイヤレス充電は7.5Wから15Wに大幅にパワーアップしています。
ただPixelsnap充電器では30分ごとに15%ずつ加算され、フル充電に到達するまで2時間以上もかかりました。パワーアップしたものの、PCでの作業中や就寝中などスマホを操作していない動画を見ながらの利用が中心になりそうです。
有線充電はより高出力な30Wに対応。こちらもフル充電に約2時間かかりました。

長時間の充電は大容量の裏返しです。Pixel 10 Pro Foldは5,015mAhの大容量バッテリーを搭載しています。
これは薄型化しなかったから実現できたものでしょう。薄型よりも誰もがスマホに求める「電池持ち」を優先することで、前世代よりも350mAhも多く、Galaxy Z Fold7よりも615mAhも大容量のバッテリーを搭載しています。
実際、どれぐらい電池が持つのか――とある1日の使い方とバッテリーの減り方をレポートします。
この日は朝7時に起床して利用を開始。1時間の電車移動中、4G/5GによるストリーミングでYouTubeやNBAを観戦。Googleマップの乗り換え機能を使いながら移動して、写真と動画を50枚撮り終えたところで残量は65%になりました。
この時点で4時間経過してますがまだまだ余裕です。
その後、Notionでこのレビューを下書きしたり、LightroomでRAW編集したり、カメラで200枚の写真を撮り終え、帰りの電車でもYouTubeを約1時間視聴して帰宅。19時に過ぎにようやく0%になりました。
利用開始からなんと13時間。画面オンを含む利用時間も6時間を超えました。
Galaxy Z Fold7はもう少しライトな使い方で夕方まで持たなかったので、Pixel 10 Pro Foldの電池持ちはかなり優秀と評価できます。
ただ、これでGoogleは折りたたみスマホの方向性を決めてしまったかもしれません。来年からいきなり薄型化に走って電池持ちを低下させることはなかなかできる決断ではないように思います。
折りたたみ初のIP68防水・防じん対応
ヒンジの進化は折りたたみスマホの進化と言ってもいいほど重要な部品です。
今回はギアレス構造を導入したことで開閉がよりスムーズになったとのこと。実際に開閉体験がどう変わったのかPixel 9 Pro Foldと比較してみると、改善されているような気もしますが、よくわかりませんでした。劇的な改善でないことは確かです。

ただ、嬉しいのはIP68の防水防塵に対応したことです。
Pixel 10 Pro FoldにPixelsnapリングスタンドをつけて、キッチンでレシピ動画を見ながら料理することも多いため、IP68防水があると安心です。おそらく推奨されていませんが、お風呂で使うこともできるでしょう。
左手でスマホを操作する人にとって大きなアップデートは持ち手側のヒンジが薄くなったことです。

これにより、本体を閉じて左手で操作するとき、これまで以上に指が反対側まで届きやすくなっています。これはヒンジの開閉のようなわかりにくいものではない明らかな改善です。
それでも250gを超える重さと、幅75mmを超えるボディは片手で快適に操作することは難しく、ベゼルをもう少し幅狭にして欲しかったところです。
折りたたみならではのカメラ体験

折りたたみならではのカメラ体験がいくつもあります。
画質の良いバックカメラでセルフィするのが流行っていますが、折りたたみスマホなら外側のディスプレイ仕上がりを確認しながらバックカメラセルフィできます。
また、本体を半分だけ立てた状態で置いたまま撮影すれば、スマホの転倒や手ブレを気にすることなく撮影が可能。小さい子供の食事風景を長回しで記録したり、タイムラプスするには最適です。
カメラ目線かつ笑顔を撮るのが難しいときも、外側の画面にアニメのキャラクターを表示する「こっちを見て」を使えば、簡単に最高の表情を記録できます。

ここに新しい「インスタントビュー」が加わりました。
写真を撮るとき保険として何枚も同じ構図の写真を撮ることになりますが、この機能を使えば、今撮った写真を同じ画面で確認しながらシャッターを押せるため、短時間で次々と構図を変えながら撮影が可能。
満足のいく写真を撮り終えたらそこでストップできるタイパ機能です。時間だけでなく容量も無駄にしません。

Googleは折りたたみスマートフォンにどれぐらいのスペックのカメラを搭載すればいいのかまだ正解を見つけられていないような気がします。
確かにタブレットクラスのディスプレイで写真を確認する場合、拡大することも多いため、望遠カメラはあった方が良いのかもしれません。
ただ、20万円を超えるスマートフォンに10万円を切るAシリーズの広角カメラを採用するのはどうでしょうか。これがトリプルカメラのためなら、いっそのことデュアルカメラで良いような気もします。






スペックゲーム
Google Pixel 10シリーズに対する懸念はスマホの頭脳とも言えるプロセッサのGoogle Tensor G5です。
ベンチマークアプリとしても人気がある「原神」は、Tensor G5が搭載しているとされるPowerVR系GPUのサポートを打ち切りました。GoogleはPixel 10シリーズのGPUはサポートを打ち切られていないと否定していますが、それでもGoogle Pixelはヘビーゲーマーが選択するようなスマートフォンではありません。
ただ、これまでも、これからも言えるのはGoogle Pixelはスペックで購入するようなスマートフォンではないということです。ゲーミングよりも、AIやカメラ、折りたたみのボディがもたらす新たな体験を優先する人向けのスマートフォンです。
Google PixelはハイエンドなSnapdragonを搭載したPixel 4を最後にスペックゲームから完全に降りて体験を重視しています。
降りてからもう5年も前のことですが、いまだにスペックゲームのリングに上げようとする人がいます。それは企画物の格闘技のようで見ていて面白いのかもしれませんが、どちらが優れているのかを測ろうとするためであれば、まったく無駄な闘いだと思います。
少なくともフェアとは言えないため、1ラウンド目をスペックゲームとするのであれば、2ラウンド目をAIゲームにする必要があります。
まとめ:vs Galaxy Z Fold7

結局、今回のレビューで知りたいところはここでしょう。
Galaxy Z Fold7は折りたたみスマホにも関わらず、普通のスマホのような薄さと軽さで大きな衝撃がありました。一方、Google Pixel 10 Pro Foldは、大容量バッテリーとQi2、MagSafe体験、IP68の防水防じんといった安心便利な機能を備え、優れたAI主導の新体験を備えています。
AIが構図アドバイスして理想の写真の撮り方を教えてくれる「カメラコーチ」、必要なときに必要な情報を提案してくれる「マジックサジェスト」は魅力的なAI機能です。
特にマジックサジェストは過小評価されています。Google Pixel 10シリーズのメディア先行レビューでも深いところまでは触れられていませんでした。携帯総合研究所では、AIが導く新体験の内容をより詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてください。
この闘いは、より優れた2in1体験とバッテリー&AI機能の争いだと思います。
折りたたみスマホならではの重さを嫌うならGalaxy Z Fold7は本当に魅力的です。
Pixel 10 Pro Foldに比べて40g以上も軽いボディながら、開けばタブレット・閉じればスマホの2in1体験を実現したことは本当に素晴らしいです。チップセットも最高峰を積んでいるため、ハイエンドゲームも大画面で快適に楽しめます。
どうせ両手で操作することが多いからと、重さを苦にしないのであれば、無尽蔵と錯覚するほどのスタミナを誇るPixel 10 Pro Foldは魅力的です。ケースの使用を強要されずにマグネット機能が使える真のMagSafe体験も大きなアドバンテージです。
一言でまとめるなら本体を閉じて使うことも多いならGalaxy Z Fold7、本体を開いて両手で操作することが多いならGoogle Pixel 10 Pro Foldをおすすめします。


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