Galaxy S23 Ultra レビュー:カメラ&電池持ちのダブルモンスター
Yusuke Sakakura
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Yusuke Sakakura
ブログメディア『携帯総合研究所』の創設者・運営者です。記事の執筆をはじめ、各キャリアやメーカーへの取材、素材の撮影も行なっています。システムエンジニアとしての経験を活かし、HTML・CSS・JavaScript・PHP・Pythonを用いたサイトデザインやテーマの構築を行っています。また、4キャリアの料金比較ができるシミュレーターの開発も担当しています。
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1台のスマートフォンに2匹のモンスターを飼っているのがGalaxy S23 Ultraです。
1匹目のモンスターはカメラです。スマホ史上最高の2億画素カメラを搭載。画素だけでなく他の部分でも重要なアップグレードを遂げており、写真・動画・自撮りすべてで大きな進化を遂げています。
2匹目のモンスターはバッテリーと電池持ちです。バッテリーの容量は前作と同じですが、チップなどの大幅な効率化によって電池持ちが大きく改善しました。
サムスン電子ジャパン
2匹のモンスターを飼うボディも前作から改善されています。
軽量なアルミニウムフレームがフラットに近づいたことで手に取った時の感触–特に片手で本体を握ってSペンで文字や線を描くときの持ち心地が良くなりました。

同じようにカーブエリアが減少してフラットに近づいたディスプレイは、同じ画面サイズのGalaxy S22 Ultraよりもキャンバスをわずかに広く使えます。
また、前作はSペンをエッジに向かって走らせるとディスプレイからすべり落ちて机を突いてしまうことがありましたが、完全に解消されているわけではないもののストレスは確実に減っています。
Galaxy S21 Ultra以前の機種を使っている人が忘れてはいけないのがSペンを本体に収納できることです。Sペンを別で購入したり、本体に収納するために約10,000円払って専用のケースを購入する必要はありせん。

ディスプレイとバックパネルは、同じ強化ガラスGorilla Glass Victus 2で保護されています。
環境に優しい20%以上の再生ガラスが使われながらも前作のVictus+から耐久性が強化されたカバーガラスを使用した背面にはメタルリングが装飾された3つのレンズが縦に並びます。
このデザインは下位モデルのGalaxy S23も含めて統一されていて、今後のGalaxy Sシリーズにおいても象徴的なデザインになるかもしれません。
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カラーはファントムブラック、グリーン、ラベンダー、クリームの4色。ただし日本で販売されるGalaxy S23 Ultraで選べるのはラベンダーをのぞく3色です。
ラベンダーはとても上品なカラーで主に女性をターゲットにしたカラーのはず。Galaxy S23 Ultraを購入する層は男性が多いため、ラベンダーは日本のカラーラインナップに加えられなかったと予想されます。カラーラインナップが豊富になると在庫管理が難しいのでしょう。
すべてのカラーをこの目で見ましたが、最も気に入ったカラーはこのクリームです。
ファントムブラックやグリーンのように指紋や手の油が目立つことはありません。すべてのカラーはこちらの記事で確認できます。
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ただ、多くの人はファントムブラックを選ぶことになるでしょう。その理由はストレージです。
これまで日本では小さい容量のみ購入できましたが、今作からは512GB、1TBといった大容量モデルも選べるようになりました。残念ながら大容量モデルはファントムブラックに限られていて、クリームやグリーンを購入する場合は最低容量の256GBしか選べません。
逆にファントムブラックを選ぶには高いお金を出して大容量モデルを購入する必要があります。
こういったことが起きないためにもSamsungにはメーカー直販で売って欲しいと言い続けていましたが、残念ながら今作もその願いは叶いませんでした。
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天然染料を使用した落ち着いた自然なカラーが使用されたボディには、世界最速、史上最速、史上最強のSnapdragonとアピールする「Snapdragon 8 Gen2 for Galaxy」が搭載されています。
Samsungによれば、このチップには特別な最適化が施されているとのこと。具体的な最適化の内容についてはクロックアップによる性能向上だけが明かされています。
オリジナルのSnapdragon 8 Gen2からパフォーマンスコアのクロック数が3.2GHzから3.36GHzに、GPUは680MHzから719MHzに向上。
オリジナルのチップと比べれば大きな差はありませんが、SamsungのスマートフォンはGoogleのPixelよりも長い最大5年のアップデートを提供することを考えれば性能は少しでも高い方が良いのは当然です。
ベンチマークスコア(3回平均値) | |
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Wild Life Extreme |
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Wild Life Extreme Stress Test |
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Geekbench 5 |
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Geekbench 6 |
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ここ数年、チップの進化は性能よりも効率化の方が重視されているように思います。そういった意味でSnapdrgon 8 Gen 2 for Galaxyは大きな進化を遂げました。
同じ6.8インチの画面サイズ、同じQHD+の解像度、同じ1-120Hzのリフレッシュレート、同じ5000mAhのバッテリー搭載しながら明らかに電池持ちが向上しています。
ある1日の使い方を紹介しましょう。
画面消灯時も日付や時間、通知のアイコンが表示する常時表示をオン、ディスプレイの明るさを自動調整、解像度をフルHD+にした状態で10時に充電ケーブルから外して利用を開始。
この日はカメラテストで外出したので移動中に約15分のYouTube視聴を行い、目的地で400枚の写真を撮影すると70%まで減少しました。
その後もGoogleマップを使ったスポット検索と乗換案内を行い、Samsung Notesでメモ書き。ニュースをチェックしながらさらに70枚ぐらい写真を撮影すると14時ごろには40%に。
次の撮影地に向けて再び電車移動して60枚ほど写真を撮影すると16時には23%まで減少。その後、カフェに入っている間は画面オフのままキープ。Googleマップを利用しながら移動を終えた19時には10%になっていました。
結局のところ530枚ほど写真を撮影。トータル利用時間は9時間。このうち画面ONの時間は5時間20分でした。大量の写真撮影とGoogleマップの頻繁な利用など旅行並みまたはそれ以上のヘビーユースなので十分すぎる電池持ちです。

Samsungによれば、電池持ちの向上に寄与したのはチップとディスプレイの効率化とのこと。Galaxy S23 Ultraは6.8インチの巨大なスクリーンを搭載していることからディスプレイの消費電力が改善されたことが特に大きな影響を与えるのかもしれません。
今年はまだ半年も過ぎておらず気が早すぎる気もしますが、2023年のベストスマートフォンを選ぶとしたらスタミナ部門でGalaxy S23 Ultraはトップ3には入るでしょう。
超が付くほど優秀な電池持ちに合わせて45W出力対応の強力な充電も利用できます。Anker 737 Charger (GaNPrime 120W)とAnker 765 USB-Cケーブルを使って充電したところ0から50%まではわずか30分。0から100%までは1時間ちょっとでした。
1時間ちょっとの充電で普段使いなら朝から夜までバッテリーの残量を気にすることなくスマホをフルで利用できるモンスター級のバッテリー体験です。
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前年の課題だった発熱はどうでしょうか。
昨年のGalaxy S22 Ultraは、かなり発熱しやすいSnapdragon 8 Gen1を搭載。新素材の導入や2層式のベイパーチャンバー、放熱や冷却システムを導入したものの、根本的な問題を解消できなかったのか同じチップを採用した他機種に比べてべンチマークスコアが低く出ていました。
今作は大幅な効率化に加えて、発熱を抑えるベイパーチャンバー冷却システムを2倍以上に大型化したことで発熱および発熱時のパフォーマンスは優れているようです。
試しにエーペックスレジェンズモバイルをプレイしましたがほんのり熱くなる程度。前作は同ゲームのプレイを開始すると発熱がはっきりと確認でき、Sペンを長時間使用しているときも手に熱が伝わってきましたが、今作ではそういった事象を確認していません。発熱の改善は体感でもはっきりわかるほど。
なお、ゲームを長時間プレイしたり、プレイしたいと思った時にバッテリーが少ない場合は、システムに直接給電することによって発熱を大幅に抑える機能も新たに搭載されています。
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バッテリー・電池に次ぐもう1つのモンスターはカメラです。
カメラはレンズの数やレイアウトまで前作と同じですが、メインカメラは発売時点でスマホ史上最高の2億画素センサーを搭載。補正範囲が2倍になった光学手ブレ補正も強力です。
モンスター級のアップグレードになった2億画素のカメラは撮影後に拡大してもディテールが保たれるため、ズームして構図を決めるような時間がないときは、たった2タップで2億画素に切り替えて撮影しあとから編集でズームすることができます。

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ただし、スマホクラスの小さなセンサーに2億個もの画素を敷き詰めると、1つ1つの小さな画素が得られる光量が不足してノイズが大量に発生するため、撮影環境は晴れた日の屋外など明るい場所に限られます。
そのため複数の画素を1つに束ねてピクセルサイズを大きくすることで光の量を増やしてノイズを低減する「ピクセルビニング」を施すため、デフォルトでは16個の画素を1つにまとめた12MPの写真が出力されます。
また、撮影シーンがノイズの発生しないすこし明るい場所でもう少し解像度が欲しい場合、例えばPCやタブレット、テレビなどもっと大きなスクリーンに写真を表示したいときは4個の画素を1つに束ねた50MPも選べます。
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2億画素で撮影した写真は1枚あたり40-50MBの大容量であることも関係しているのか、シャッターラグが発生して連写には向いていません。Googleフォトに同期している場合は容量がどんどん食いつぶされます。
結局のところ生の2億画素で撮る機会はかなり限られていますが、12MPも50MPも裏側では2億画素センサーとピクセルビニングによって生み出されているものなので決して無意味なものではありません。
2種類の望遠レンズによるズーム撮影と超広角レンズは前作と同じ。スマホ離れした写真が撮れる10倍ズームと月も撮れる100倍ズームは相変わらず強力でiPhone 14 ProにもPixel 7 Proにもないものです。
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動画撮影では8Kによる30fpsに初めて対応。補正角が2倍になった光学手ブレ補正に加えて、歩く・走るといった人の方動きを予測してブレを補正するアダプティブVDIS(電子手ブレ補正)によってなめらかな映像を記録できます。
フロントカメラも新しい12MPセンサーに変わりました。
前作の40MPからスペック上はダウンしているものの、暗所でも素早く正確にピントを合わせられるようオートフォーカスが進化。AIによるソフトウェア処理によってポートレート撮影では髪や顔の質感をリアルに仕上げて、不自然になることも多い髪と背景の境界線のボケ感もナチュラルに記録されます。
ただ、一方で夜間撮影や店内撮影で露出過多になることも多く、ナイトモードではイルミネーションが変に処理されるなど、カメラのソフトウェア処理はアップデートによる改善が必要です。
最も残念なのは相変わらずデカすぎるシャッター音です。スピーカーを指で完璧に塞いだ時にようやく撮れる程度。何も対策せずにシャッターを切ると店内にシャッター音が鳴り響くので撮影しづらく、取材の時にも周りを気にしながら撮る必要があるほどです。
Android 13をベースにしたOne UIは世界最速のSnapdragon効果もあって高速です。
片手モードや睡眠・運転・仕事といった生活状況に合わせて通知のミュートやアプリの使用制限ができるモード機能、スクショ後に表示される邪魔なツールバーの非表示、画面を見ている間は画面を常にオンにするモーショ ンジェスチャーなど気が利く機能も収録されていて快適。
個人的に片手モードは画面が縮小するよりも下にスライドするiPhone式のほうが嬉しいのでオプションとして用意してほしいところ。
また、標準の文字入力アプリがイマイチで日本語の変換精度も優秀とは言えず、両手で高速に文字入力していると処理が追い付いてこないのか頻繁に引っ掛かるため、文字入力をGboardに変更して使っていました。
ただ、標準の文字入力アプリ以外に設定するとSペンを使って入力ボックスに直接文字を書き込める機能が利用できなくなってしまうのが悲しい。Sペンを抜いたときは文字入力アプリが自動で変わるような機能が欲しいところです。
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- 世界最速チップによる最高性能
- スマホ離れした写真が撮れる光学10倍ズーム
- 驚異的な電池持ち
- 強化された冷却システムによる耐発熱
- 大容量モデルの追加
- 高額な機種代金
- デカすぎるカメラのシャッター音
Snapdragon史上最速の新しいチップ、より優れたパフォーマンス、モンスタークラスの電池持ちと充電性能のコンボ、パフォーマンスを長く維持できる優秀な冷却性能、史上最高の2億画素レンズ、超高画素を活かしたカメラ処理、優れた手ブレ補正など多数の進化が詰まっています。
海外ではマイナーアップデートと評価されていますが、日本では512GB、1TBといった大容量モデルがようやく購入可能になり、eSIMにも対応するなど、マイナーアップデート+αの内容になっています。
大容量モデルの追加はGalaxy S22 Ultraユーザーからしても魅力的なはず。下取りに出すなどして購入を検討するのも良いでしょう。
Galaxy S21 Ultra以前の機種を利用しているユーザーに対しては手放しで買い替えをオススメできます。ディスプレイ、カメラ、チップ、電池持ちといったスマートフォンの重要な要素に加えて、Sペンを本体に収納することも可能です。
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