Google Tensor G5の新機能と変更点まとめ
Yusuke Sakakura

Yusuke Sakakura
ブログメディア『携帯総合研究所』の創設者・運営者です。記事の執筆をはじめ、各キャリアやメーカーへの取材、素材の撮影も行なっています。システムエンジニアとしての経験を活かし、HTML・CSS・JavaScript・PHP・Pythonを用いたサイトデザインやテーマの構築を行っています。また、4キャリアの料金比較ができるシミュレーターの開発も担当しています。

Googleが5世代目となる最新のプロセッサ「Google Tensor G5」を発表しました。
プロセッサはスマホの頭脳とも表現される重要な部品。過去最大のアップグレードで飛躍的な進化を遂げたTensor G5は、2025年8月28日に発売されるGoogle Pixel 10シリーズに搭載され、優れた基本性能とゲームに関わるグラフィック性能、高度で便利なAI機能を実現します。
この記事では、Google Tensor G5の新機能と変更点をまとめています。
待望!!TSMCの3nmプロセス製造
チップセットにおいて製造メーカーはとても重要です。
2021年発売の初代Google Tensorから第4世代のTensor G4までサムスンが製造を担当していましたが、今作から半導体メーカーのトップであるTSMCに変更されました。
その優れた技術はSnapdragon 8 Gen1(Samsung製造)で大きな問題となった発熱が、Snapdragon 8+ Gen1(TSMC製造)で解消されたことを考えれば、わかりやすいです。
特にGoogle Pixelは発熱と消費電力において課題を抱えていたことからTSMCへの変更は嬉しいアップデートです。
性能の進化
Tensor G5は、TSMCの最新3nmプロセスノードで設計されたチップセットで、電力効率を抑えながら2桁台の性能向上を実現しています。
基本性能を支えるCPUは平均34%高速化されたことでスクロールやアプリ起動がスムーズに。AIを支えるTPUは最大60%もパワフルになったことで、より高品質なAI体験を効率的に提供することが可能です。
さらに、ISPのアップグレードによってカメラの画質が大幅に向上。Googleいわく写真と動画の両方において、卓越した画質を実現しています。
オンデバイスAIの進化
Tensor G5には、最新のオンデバイスAI「Gemini Nano」が搭載されています。
これにより、発売時から20以上の完全オンデバイス生成AI体験を堪能できます。
その中には、必要な情報を先回りして提案する「マジックサジェスト」や、音声通話時に話者の声のトーンやニュアンスなどをそのまま翻訳する「マイボイス翻訳」といった機能を利用できます。
強固なセキュリティとプライバシー保護
セキュリティチップには引き続きTitan M2を採用しています。
Google Tensorを搭載したデバイスは初代から4世代にわたって、テクノロジーおよびリサーチのアドバイザリーグループであるOmdiaの調査において、セキュリティで最高評価を獲得。
詐欺電話の対策機能として、自動通話スクリーニングや詐欺検出、マルウェア保護、追加料金なしで利用できるPixel VPNなども利用できます。
最新のAI機能
Google Tensor G5では、最新のAI機能群が追加されています。
マジックサジェスト
スマートフォンの操作性がPCよりも劣る要因は、複数のアプリをいくつも並べることができず、アプリを行き来しながら操作しなければいけないことです。
この手間を解消するのがマジックサジェストです。
文脈に応じて今必要な情報を今表示しているアプリ上に積極的に提示することで、アプリ間の行き来を減らします。

例えば、「今日の集合場所どこだっけ?」と聞かれたらGmailで受けとったメッセージを元に場所を提案したり、「あのとき言ってた店の名前なんだっけ?」と聞かれたら過去のやり取りから店の名前を提案したり、「そこに今度の日曜日行かない?」と聞かれたらGoogleカレンダーの確認やそこまでの道順を提案することもできます。
さらに、予約の変更を頼まれたらその店への通話ショートカットを表示されます。通話画面に移動したら今度は予約の詳細が表示されるので、それを確認しながら予約内容を変更できます。メールへのショートカットも用意されます。
発売時点では、最近の旅行の写真を共有する提案やカレンダーへのイベント追加、天気アプリにおいて旅行に関連した天気予報を表示するなど、ユーザーが喜ぶであろう精度の高い提案が表示されるとのこと。学習機能も備えており、使えば使うほど提案の内容は正確に、そして頻繁になっていきます。
なお、マジックサジェストがデータを参照しないようオプトアウトすることもできます。
マイボイス翻訳
翻訳機能を使うと違和感のあるコミュニケーションになるのは、機械的な声から相手の気持ちが読み取れないことにあります。
そこで、Google Tensor G5では、音声翻訳を自分に近い声で相手に届ける「マイボイス翻訳」が追加されます。

オンデバイスAIが通話内容をリアルタイムに翻訳して、それぞれの話者に聞こえるように再現する機能です。
どちらかがPixel 10シリーズを使っていれば、利用できるため、購入したその日から通話相手に関係なく利用できます。
なお、翻訳結果を保存することはできません。
その他のAIアップデート
その他のAIアップデートとしては、Pixel 10シリーズにNotebook LMがプリインストールされます。
NotebookLMは、共有した情報をAIに認識させることで、音声とテキストの要約が生成され、質問形式で情報を探すこともできます。
さらに連係機能も強化され、新たにPixelスクリーンショットとレコーダーの文字起こしを連携できるようになります。
- AI音声入力ツール
- Pixelスクリーンショット
- Pixelスタジオ
- NotebookLMとの連携
- 一緒に写る
- パノラマ撮影
- AIライティングツール
- レコーダーの音楽作成
- Call Reason
新たなGemini Live
Gemini Liveには、新たにビジュアルオーバーレイが導入されます。
これはGemini Liveにカメラを共有すると、自分が見ているものに直接ハイライトしてガイドしてくれる機能です。
例えば、カメラを向けて「この建築について教えて、この歴史は?注目すべき面白いポイントはどこ?」質問することが可能に。さらに、洗濯機のエラーコードを見せて「このエラーコードは何を意味しているのか、どう直せばいいのか教えて」と聞いてトラブルを解消することもできます。
さらに、Gemini Live用の新しいネイティブ音声モデルも導入されました。
声をもとに興奮しているのか、不安なのかを検知。それに応じて返答することで、より自然に対話することが可能になります。
新たなカメラ体験
Google Tensor G5を搭載したGoogle Pixel 10シリーズでは、優れたAIモデルを活用した新たなカメラ体験を豊富に楽しめます。
カメラコーチ
新たなカメラ体験として、最高の一枚を撮るためにアドバイスしてくれるプレビュー版の「カメラコーチ」が追加されます。
Geminiモデルを活用することで、より良い構図やアングルを提案。
例えば、撮影スポットでかっこいいメガネをかけている友だちを撮ろうとしてカメラを構えると、カメラコーチが人物を強調したポートレートが撮りたいのか、観光スポットと一緒に撮りたいのかなど提案を行います。

建築物と一緒に撮ることを選ぶとカメラ目線を指示し、ローアングルや背景を額縁のように使うことなど具体的な指示をします。こうした知識はこれから写真を撮るときにも役立つヒントになります。
これまでは誰かに教えてもらうか、写真や動画を見て学んでいましたが、これからはAIを通して実践形式で学ぶことができます。
一方、こうしたアドバイスに従うことで、誰が撮っても同じ写真になってしまうことを危惧する人もいるはず。
そこで生成AIがまったく新しい構図のインスピレーションを与えてくれる「ヒントを得る」機能も用意されています。
オートベストテイク
良い表情をそろえて集合写真が撮れるベストテイクは「オートベストテイク」に進化します。
これまでは同じタイミングで撮影された複数の写真からベストな表情を検出していました。そのため、連写していない場合は使えず、この機能を利用するために時間をかけて連射する必要がありました。
オートベストテイクでは、数秒間に最大150枚の画像をAIが解析して、その中から最も良い表情をしている瞬間を探して合成します。これにより連写は不要になりました。
最大100倍の超解像ズームPro
これまでのGoogle Pixelでは、ズーム倍率が最大20倍または30倍に制限されていました。
Pixel 10 ProとPixel 10 Pro XLでは最大100倍の「超解像ズームPro」に対応します。これにより東京から遠く離れた富士山の姿も鮮明に撮影できます。
Pixel 10 Pro / 10 Pro XL限定の「超解像ズームPro」👀
Pixelカメラ初のディフュージョンモデルを使用。オンデバイスAIで失われたディテールを書き直して100倍ズームでも綺麗に撮れる。これ凄かった💙 https://t.co/CXFYu3GyvT pic.twitter.com/TahrxO3ytN
— Yusuke Sakakura🍎携帯総合研究所 (@xeno_twit) August 20, 2025
超解像ズームProには、Pixelカメラにおいて初めてディフュージョンモデルが使用されています。
GoogleいわくPixelカメラで動作する中で最も大規模モデルがズームで失われたディテールを補い、あたかも光学ズームで撮影したような高解像度写真を撮影できます。
C2PA
Pixel 10シリーズは、スマートフォンカメラとして初めてC2PAに対応します。
生成AIが画像や映像分野で急速に進化する中で、フェイク画像やディープフェイクにだまされる被害も出ています。そこで誰がどうやって作ったのかを明示するのがC2PAです。
C2PAはTensor G5やTitan M2セキュリティチップ、そしてTensor Security Coreによって実現されています。
すべての処理はオンデバイスで行われ、画像内にセキュアなメタデータを生成して完全な作成過程を記録します。
この情報はAIによって編集されたものだけでなく、編集されていないものにも付与されます。常にラベルが存在しているため、AIで編集されたのか、そうでないかは一目瞭然です。C2PAはGoogleフォトで直接確認できます。



コメントを残す